哲学分野のオントロジー理論研究の成果がいま広く社会に注目されています。 また、オントロジーと論理学の組み合わせにより有効な知識処理理論の実現が期待されています。 本研究ではオントロジーと論理の哲学基礎理論をさらに多角的に発展させるとともに、 オントロジー理論の応用分野と連携してオントロジーと論理の組合せの応用方法論を発展させていきます。 大規模オープン知識ベース(例えばGeneOntology データベースや医療データベースのような生命科学的データベース)、 次世代セマンティックウェブ、オントロジー工学、ロボット工学、大規模地理情報や地球規模防災システム、 e-コマース等のビジネスモデル、情報家電等のネットワーク機器設計、法律知識ベースなどの広い分野で 哲学から発信されたオントロジー方法論が実際に利用されはじめています。 オントロジー方法論及び関連する論理学方法論は文系の哲学・論理学においてアリストテレス以来2千数百年の研究の蓄積があり、 又現代哲学においてもフォーマル オントロジーや論理と結びついた新しい発展が続いています。 21世紀になって哲学から発信されたこれらの理論が科学技術と融合させ、広く生命科学、社会科学、工学情報科学等で応用を先導します。 また、慶應義塾グループはオントロジー学際研究ネットワークの日本の中心拠点として 欧米オントロジーコンソーシアムグループ(米国国立オントロジー研究センターNCOR、欧州連合オントロジー研究センターECOR)から既に認知されています。 これを本オープンリサーチセンターの枠組みで位置づけます。 (なお、米国オントロジーセンターNCOR及び欧州オントロジーセンターECORも本オープンリサーチセンター同様に 人文科学系哲学分野を中核とした文理融合学際センターです。)
古代ギリシアのプラトン、アリストレテスに始まるオントロジーは、当初から世界の構造的把握として論理学ないし論理的思考と密接な関わりにおいて発展してきた。
とりわけ、西洋中世が古代ギリシアの哲学をもちいて、イスラエルの宗教伝統あるいはイスラム思想をも取り入れつつ独自に形成した新たな世界観は、それ以後の存在把握を決定的に方向付け、近世から現代にわたり、デカルト、ライプニッツ、カント、フッサールらによって形成される学問的知識体系を準備したと考えられる。
とりわけ重要なのは時間空間により規定された個という概念である。
本研究グループは、このように哲学の中心的課題であったオントロジーについて、その歴史経緯を再検討するとともに、現象の構造化、形式化としての形而上学の再評価を目指す。
言語処理用に開発されたWordNetやEDRのような汎用オントロジーを利用して概念間の上位下位関係、 および所与のドキュメントに共起性処理を施すことによりその他の概念間関係をインタラクティブに推定する、 ドメインオントロジー構築支援ツールDODDLE-OWLを開発してきたが、近年,オープンソースとして公開し、 現在、20カ国以上、100人以上のユーザを得ている。
しかしながら、ドメインオントロジー構築コストをさらに低減させる必要があることから、 本研究プロジェクトでは、オントロジー検索エンジンであるSWOOGLEにより検索された既存オントロジー、 および集合知として急速に普及しているWikipediaとフォークソノミィを活用して、 より高度なドメインオントロジー構築支援ツールを開発することを目標とする。 さらに、実問題領域におけるドメインオントロジーを本ツールにより開発するケーススタディを実施することにより、 本ツールの評価も併せて実施する。
環境問題について今日多くの文書が発表されているが、学術的な用語の使用法とメディアを通して人口に膾炙している用語の使用法には隔たりがある。また環境用語は、その時々で使用される用語が異なるため、多くの同義語が存在し、表記される用語とその意味内容の関係は時とともに変化している。
私たちの研究グループはこのような環境用語について、表記のゆらぎを吸収しながら、テクストマイニングの手法を用いた解析を施し、環境用語の関係を表示するオントロジーを構築していく。具体的には、環境情報学会に過去に発表された論文を、タイトルや章の見出し参考文献などの情報とともに電子データ化し、そこに解析を施すことで、環境用語に関するオントロジーを構築し、過去35年の間に環境用語がどのように変化し、他の用語とどのような関係を結んできたのか、詳細な分析を行っていく。
そして、オントロジーを基にしたテクストデータの解析結果を基にして、これから環境問題に対してどのようなコンセプトを持って対処していくべきか、新たな視点から提言を行うとともに、WEBを通じた環境情報収集のあり方を提案する。