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プロジェクトB
動物とヒトの推論に関する脳科学
担当者:岡田(哲学・倫理学)、渡辺(心理学)、伊澤(文学研究科特別研究教員)
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従来、推論活動は、言語活動と並んで、ヒトを他の動物や機械から区別する特別な要素のひとつであると考えられてきた。この考えの背景には、数学の命題を典型とする客観的・永続的な真理、及び、その間に成り立つ妥当な推論規則の解明を目指す、アリストテレスに始まり現代に至るまで支配的な論理観がある。これに対して近年、従来の論理学の知見をふまえながら、状態の変化や手続きを扱う動的観点に基づく推論研究が進展しつつある。論理学の分野では、資源やアクションの扱いをベースにして伝統的な論理概念を再構成する線形論理が登場し、言語的意味論の分野では、文脈依存性を扱う関連性理論や状況意味論などが注目をあつめている。さらには、言語・記号処理の体系として捉えられてきた従来の推論モデルに対して、人間の空間認知に注目する図形推論の研究が進んでいる。こうした新しい研究の流れは、論理的推論を、ヒトと他の動物を区別する特別な要素としてではなく、ヒトと動物に共通する、より柔軟で普遍的な形式として捉え直す可能性を示唆している。論理的推論のどのような側面が、ヒトが進化の過程の中で得てきたものであり、一方、動物種固有の、あるいは、ヒトと動物に共通の「論理」があるのだろうか。
本プロジェクトは、論理的推論に関する新しい理論的研究で得られてきた知見と、動物を用いた比較認知研究から得られてきた知見を、双方に横断的に理解・議論をすることでその融合の可能性を図り、ヒトと動物の推論の共通・固有基盤を理解することを目指している。
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